
実は私、13年ほど前まで、バリ・ヌサドゥアでレザーのオーダーメードショップを営んでいました。
海外での店舗経営に至るにはいろいろいきさつがあるのですが、今回は省かせていただき…

登場人物は一人、除いて書かせていただきます。
(語りだすと人の悪口を言っている自分に嫌気がさしますので

)

vol.1に出てくる

Iというインドネシア人を責任者に3人のスタッフ。
オーストラリアやヨーロッパの観光客は、よくバリでレザーやカシミアのジャケットやパンツをオーダーします。

あまり知られていないのですが、インドネシアのラム皮やカシミアは高品質でリーズナブルなんです。
(牛皮は

ダメです)
観光客が滞在中にフルオーダーのレザー製品を

ホテルまでお届けするシステムです。
ドイツ人のお客さんは気に入ってくれて、ドイツに帰ってからもオーダーを出してくれたり…


そこそこ順調でした


ある日、Iから

国際電話が。

「高橋さん、オーダーがたくさん重ねってレザーの仕入れのお金が足りない。10万円、どうにかならないですか?」

「お前、どうにかって… 送金しても中4日はかかるし。で、なんでお金ないねん?そんな大きなオーダーか?」

「い、いや…

最近お客さんが多いので、ストックをかなりしているんです。でも、今回30着のオーダーがストックのないレザーで… 困っています」
この

電話からちょっと変な方向に向かいます。
毎日の売り上げ日報と、1週間に一回、銀行通帳のコピーと売り上げ集計をFAXさせていました。

ギャラも通常のインドネシア人の1.5倍程度は取らせていました。
3日前の通帳コピーにはまだ150,000,000ルピア(当時レートで¥2,000,000)は残っています。
いくらレザーの在庫を増やしても、店舗規模やバリエーションを考えたらすべて仕入れることは

考え難いことです。

電話に疑問

を感じながら、本当にオーダーならお客さんに迷惑かけられない…

どうにかしなければ。
ふっと、後輩が「彼女とバリに行きますねん」と2,3日前に行っていたのを思い出し、

電話。

「お前、いつから行く?そうか!明日か!で、ホテルは?パドマ、オッケー。で、今どこや?」

「居酒屋ですわ。ホルモンうどんのうまい、秀吉です」

「わかった、今から金持って行くからバリに持って行ってくれ。

Iにパドマに取りに行かせるから」

居酒屋「秀吉」に10万円を届け、お礼に後輩カップルのおあいそを払い、

Iに電話です。

「あした、後輩がパドマに泊まるから、取りに行け。10万円持たせたから」

「はぁ〜助かった。ありがとうごじゃいます」
日本語達者な

Iが噛んでいます。何か、おかしい…

それから1週間、レポートが届きません。通帳どころか売上レポートも。
3日前に

Iに

「早よFAXせえ!」と電話した時は

「ごめんなさい。忙しいので…」と言い訳。

Iの

携帯に電話、出ません。店に電話をします。

「おい、アグス。Iは?どこにおる?」

「Iは3日来ていません。今、お店のもの何も無い」

「待て

どういうことや?何も無いって」
アグス、日本語は全くしゃべれません。英語は教員免許を持っているのでペラペラです。
私、片言… しかし、アグスは感じ取っています。

「Iが書類とお金と通帳を全部持っています。困っています。オーダーあるのに作れません。今日、高橋さんにヘルプの

FAXしようと思っていました」

予感が当たったなあ… と後悔しても始まりません。
とにかく

Iに連絡をつけるよう

アグスに指示、ほかのスタッフと共に全力で探せ!と。
私は、ガルーダ航空大阪事務所に最速でバリに行けるチケットをリクエスト。
3日後、

バリに着いた私を当時インターコンチネンタルのスタッフだった

AJIが迎えてくれ、ヌサドゥアの店舗に急ぎます。

到着。レザーショップの前、8人の人相の悪いインドネシア人に囲まれた

アグス&スタッフ


「あっ!高橋さん!助かった〜」

「なんや?こいつら?なにがあった?」

「Iにお金を貸していると… それを払えと…」
8人は4人が日本でいう街金の従業員、4人は個人的に

Iに金を貸している奴らです。
翌日、話を聞いてやることにして一旦引き揚げさせ、アグスに

「明日、朝一銀行に行くぞ。通帳の紛失届出せ。で、いったん解約や」
翌日、いろんな意味で修羅場が待ち構えている予感を抱きながら、腹立たしさを紛らわせるため

カラオケに向かうおっさんでした。


どろ酔いじゃ!
引き続き、別のホテル

のお話のはじまりはじまり…
スイートな気分を満喫させてくれたホテル、経済発展を続けるインドネシア人の国内ツアー客が増え、オーナーがここぞ!とばかりに韓国企業に売却。
改装工事に入りしばらく休業。
新しい定宿を見つけました。レギャン通りの先、ほとんどスミニャックというちょっと空港からは遠い立地。
見た目はそこそこ、オーストラリアの格安ツアー客がたくさん泊っています。
スタンダード

1泊3000円、デラックス

4000円、まあまあでしょう。
スタンダードはバスタブがありません。シャワーのみ。
これはよくある話ですが、便器の横20pに40p四方程度のシャワースペース。
前の定宿よりはバスルームはきれいですが、このシャワーと便器の距離はちょっと許容範囲外です。
ある日、私が建築資材、インドネシアの石、アイアン製品等を輸入販売している建築会社の社長

が、

「勉強のために、うちの若いのを連れて行ってほしい。面格子もオリジナルで作りたいし、図面、持って行かせるから」
と言って来ました。
その会社とは長い付き合い、もちろんオッケー

です。
若者

、初めてのバリ、しかし私

のことをよく知っているので安心しています。
この頃、JALは破たんに向けてまっしぐら、関係ないのですが、現地夜中11時30分頃着に時刻変更となっていました。
空港から約30分、ニュー定宿に到着。

チェックインを済ませ、私

はデラックスルーム、若者

はスタンダードルームへ。
若者

には、シャワーの状況を教えてありました。若者、

「自分、全く平気です。そういうの、あまり気にならないタイプですので」

「おい、荷物置いて、シャワーでも浴びたら遅いけどメシ、行こか」

「わかりました!シャワー浴びたらすぐ部屋行きます」
シャワーを浴びようとパンイチになった時、
「トン、トン、トン」ドアが遠慮深くノックされます。

「ん?おー、どないした?」若者が荷物を抱えたまま、悲壮な顔で立っています。

「あ、あの〜、このホテルは布団とか貸してもらえるのでしょうか?」

「えっ?なに?お前、何言うてんの?」

「い、いや〜… バリ初めてなんでこんな場合どうしたらいいのかなぁって思いまして」

「だから、何言うてんねん。まあ、入れ」
訳が分かりません。布団、貸してもらえる?

「うわ!高橋さんの部屋、普通ですやん!立派ですやん」

「立派ってなあ、日本じゃリゾートホテルって謳ったらあかん程度やで。どないやねん」

「ボクの部屋、何にもないんですよ。な〜んにも」

「んな訳ないやろ。お前、ラリってんのか?」
部屋に何もないホテル… ありません。
とにかく、若者の部屋に行ってみます。
ガチャ、バタン。真っ暗…

「なんや?電気は?あれ?」スイッチがありません。壁から外されています。

「ね、困るでしょ?訳、分かりません」
ライターを点けてみます。

「うわ!なんじゃこりゃ?わはっ、はっ、はっ」

「笑い事じゃないですよ〜」
なんとなんと、何もありません。

電気がつかないどころか、部屋の中、見事に空っぽ。
部屋の真ん中に照明を外す時に使ったのであろうイスひとつ…

「あかん、おもろすぎる。お前、ここで寝ろや。あかん、腹痛い。はっはっはっはっ」
なかなか文章では伝わりませんが、海外のホテルの部屋に入ると部屋の真ん中にイスひとつのみ。
それを見て、困って「布団、貸してもらえるんですか?」と聞く素直な若者

。
私のツボにはまりました

。横で若者、どうしていいのかわからず目が白黒… 夜中1時。
もちろん、その後フロントに。

「あっ!ごめんなさい!改装中の部屋でした」
無事、別の部屋を用意してもらい、事なきを得ましたが。
日本では考えられないミスです。しかし、インドネシア。
笑ってやりましょう、被害者は私ではありませんし。


その後、深夜営業しているレストラン

で生まれて初めてナシゴレン

を食べた若者

。
バリのいつも使っていたホテル

の話です。
場所がン・グラライバイパス沿い、空港からもクタの街中からも近く、交通の便が良いので定宿となっていました

このホテル、ツインルーム

1泊3000円、シンプルですが部屋は普通です。
しかし、インドネシア独特のバスルーム&トイレがあまりきれいではありません。

たま〜にですが、冷蔵庫の中には賞味期限を2年程度過ぎたドリンクがあったりします。

何年か前のある日、渡バリした私

はいつものように出迎えのAJI

と共にホテルへ。
フロントにはvol.6で出てきた、スーパーなワキをお持ちのスタッフ

がニコニコ出迎え。

「AJI、あかん。チェックインしてきて」

「オッケー、わかった」
5m以内の結界に入ると、目にきます。息を止めても目にきます

なんやら、チェックインに時間がかかっている様子…
ロビーでたばこ

を吸いながら、

「おーい、AJI。どないした?」

「ジャカルタからのツアー客がいっぱいでスタンダードルーム満室。ちゃんと予約していたのにダメね」

「なんじゃそりゃ?予約、無視か!」

「スイート用意してるって。でも、値段1泊9000円… だから怒ってる」

「9000円?アホか?もっとええホテル泊まるやろ、9000円なら」
AJI、その場で急いで当日予約のできるホテルに何軒か電話…

しかし、空室ありなのは私がとてもとても無理なホテルばかり… 車

で寝る方がましです。

支配人

を呼び出し、叱ってくれてやります。
支配人、平然と

「日本人ならスイートが好きでしょう?」

「もう、ええわ。で、なんぼにするねん?ええ、コラ!」
AJI

と共に激怒しながら交渉。結局

5500円で決着。まあ、しかたないでしょう、インドネシアですから。

さあ、スイートルーム…
最上階、3階… 忘れもしません、301号室。

入りました。ん〜、スイート。かび臭もスイート。


「くっさ!なんや、これ?ただ、広いだけ?」
そう、スタンダードの2倍の広さ、装備、設備全く同じ。

「はぁ〜、しゃーないか。暑いわ。エアコンっと」
リモコンでON!んっ?ON!んっ?
リモコンに電池が入っていません。最高ー!

電池を持ってこさせ、再びON!動きました。

とりあえず、ビール

です。冷蔵庫、冷蔵庫。ん?常温?電源OFF…
「耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び」天皇陛下の玉音放送が脳みそ内を駆け巡ります。

ルームサービスで持って来させます

。冷えてるか!
冷えてました。ちょっと落ち着き、グッと行きます。ふぅ〜生き返ったっと。


AJIと翌日のビジネスの打ち合わせ。ハードな行程が待っています。
資料を見ながら、ファクトリーの訪問順を考えている二人… なぜか汗だく…

エアコンからは生ぬるい風が「ゴー

」とけたたましい音と共に噴き出されているだけ。

「もう!ええ加減にせんかい!フロント、呼べ!」

ホテルのスタッフ、こんな時でもあわてません。「何かあった?」という感じでやって来ます。

「コラ!もう、ええ加減にせえよ!早よ、エアコン直せ!」
エアコンを調整している間に小便に。

「あーあ、たまらんなあ。ふぅー、あれ?」
流れません。トイレ、静かです。「オラー

」もう少しでバリで脳溢血でした。

スタッフ

、私の叫び声に少しあわててバスルームへ来ます。

「あっ、元栓、閉まっていました。これで、オッケー」

「ほんま、放火するぞ、お前ら!」
元栓を開けて、流します。「ジャー!」強烈水圧、どんどん溜まり、ついには便器から溢れ出し…

「なめとんのか〜!ほんま、殺すぞ!コラー!」
支配人

がやってきて、「たいしたことないやんけ」というそぶりで一応謝ります。

「もう一つのスイート、使ってください。302号室。ここは昨日、ジャカルタ人が泊ったから大丈夫。この301号室は1年間、誰も使っていなかった」
302号室、エアコンOK、トイレOK、シャワーチョロチョロ。
もう、怒る気もしません。
スイートだぜぇ。



JALがまだ関空… 空港チェックインから3時間半経過、本来ならジャカルタ到着の時間です。
汗だくで走って来た、JALの職員、まだ若い兄ちゃん

です。

「す、すみません。カウンターで何も言われなかったですか?」

「何かってなんや!何か言われなかったって何のことじゃ!」
私、気は短いのですが、あまり初対面で怒ったりしません。

しかし、JAL、何の権限もないような若者をよこし、「何か言われなかった?」
アホか!何か聞いてたらお前呼んでないやろ!


「あっ、あっ、あの… プサンから関空、それからデンパサールというルートの機材なんですが、プサンが大雪で8時間ほどフライトが遅れました。で、もうすぐ関空を飛び立ちます」

「ふ〜ん、ほんでお前らは客に何の告知もせずに空港内で8時間以上待てってか。よう出来とるわ」

「い、いえ… あの、ツアーのお客様にはツアー会社から連絡がいき、近くの弊社が用意したホテルに…ツアー以外のお客様にはカウンターで告知したうえでホテルまでお送りすると…」

「ふ〜ん、ほな、なんで俺らはここにおるの?」

「い、いや… カウンターの人間のミスかと」

「ボケ!お前ら航空会社やろ!客がチェックインしたかどうかわからんはずないやろ!」

「カ、カウンターが… 連絡が…」
怒りの絶頂です

。カウンターの人間もダメですが、国際線の客が搭乗手続きしたかどうか、現地職員が把握していません。
しかも、乗客名簿を確認もせず、連絡を取ろうと努力もしていません。

プサンで遅れがかなりの時間になることは午前中、しかもかなり早い時間でわかっていたはず。
ホテルに連絡するくらい、小学生でもできます。


「お前、下っ端か!もっと偉い人間、呼んで来い!」

「は、はい!少々お待ちください」
たぶん、連絡を受けてえらいさん

も空港には向かっているのでしょう。
オヤジ

、私とJAL職員


のやり取りをサンドイッチをほおばりながら聞いています。


「今、関空?何が?どないした?」

「聞いてなかったんかい!まだ、関空飛び立ったところや言うてたでしょうが!」

「何が?」
殺してやってもいいですか?

待つこと10分、えらいさん

が来ました。
年のころなら60代前半というところでしょうか。

「いや〜、すみませんな。連絡の不行き届きで」
おっさん、何か勘違いしています。私たちの向かいのソファにドッカと腰かけ、足を組みます。

「おい!おっさん、天下りか!国交省の天下りか!」
おっさん、ハトがまめ鉄砲を食らったような目をしてびっくりしています。

「な、なにを… い、いや、申し訳ない」

「コラ!やっぱり天下りか!おっさんの態度は世間知らん、一般人下に見てる官僚の態度じゃ!ナンボ偉いかしらんけど、人に詫びる態度ちゃうやろ!」
おっさん

、急いでソファから降り、床に正座をします。たぶん、上司以外に叱咤された経験がないのでしょう。デンパサール勤務の天下り、どうせ官僚時代の地位も大したことありません。
そこに先ほどの若い職員

がやってきて、おっさんに何か耳打ち。
おっさんの顔色が悪くなってきます。

「あ、あの… 今からでもホテルにどうぞ。お送りしますので…」

「コラ!今、何時や?なんやかんやでもう10時前やろ。今から?イミグレで出る手続きして、ホテル入ったら何時や?コラ!若いの!チェックアウト何時にするねん?」

「一応、2時半に飛行機が到着予定ですので… 3時半のボーディングと考えて1時には…」

「ボケ!たった2時間、ホテルでくつろげってか!そのために今からイミグレ別室行って手続きせぇっちゅうんか!」

「て、手続きは手前らがいたします」

「ボケ!本人おらんのにどうやってイミグレが確認するんじゃ!」

「あっ、あっ、い、いや」
アホです

JALの職員が一般人に国際空港の厳しさを教えられています。
当時、私毎月渡バリしていましたのでJALマイレージクラブのサファイアという実績と、なんとなんと!
オヤジ社長

、かなりJALの株を持っていました。個人にしてはかなりの株主。
その内容を名前から調べてきたのでしょう。若い職員の耳打ちはその内容のようでした。

「で、では、空港内のレストラン等、ご自由にお使いください。支払いはすべてJALが致します」

「買い物も?免税店で買い物もええの?」
オヤジ、やっと口を開いたらこれです。ええわけないやろ!アホ!


「ほな、ずっとついて来いよ。で、支払いだけしていけよ」

「いや、そうじゃなくて… JALに請求しろって言ってくだされば…」

「おっさん、インドネシア人が理解できるか?JALの支払いやねんって言うて」

「言っておきます。すべての店舗に。間違いなく」
なかなかいい条件です

。許してやろうかと… その時!

「コラ!お前らの世話になんかなるか!」
オヤジ、何をトチ狂ったか叫びます。今、事情が呑み込めた???

「JAL?なんじゃ!いらん、いらん!金、困ってない」
そういう問題か!
結局ラウンジで爆睡。その間、パーサーから機長からがお詫びに来ます。
もうええ!もう謝られたら腹が立つ、オヤジ

のアホに。

午前3時半、ボーディング、4時テイクオフ。
周りの客はJALの用意したホテルでゆっくり休養、食事

も出たとか。
午後3時半関空着。

オヤジ、関空でトイレに行っている間に空港バス

が出発の時間です。
とっとと帰ってやります。
もう、限界じゃ!

余談ですが、オヤジ社長

、JALの上場廃止により大損こきました。
へっへっへっ…



オヤジ社長を一晩放置、翌朝

オヤジのクレーム電話で最高のモーニングコールを頂き、目覚め絶好調な私。

それでもまた、自身の仕事を優先、

オヤジが「真鍮ファクトリーに早くいきたい」と言っていたことは後回し。
予定をこなし午前11時45分、仕方なくザ・レギャンへオヤジを迎えに行きます。

部屋にいません

。プールサイドを探していると、いました!

なんとオヤジ、不細工極まりないカラダ

をさらけ出し、サングラスをかけカクテルを飲んでいます。

ボンボンベッドに寝そべるオヤジ、まるで股間を怪我したゾウアザラシ

赤のブーメランパンツ一枚…
セレブです、セレブ。声、かけることは禁止

です、これは危険です。

自分のためにこの場を離れます、見つからないようそっと…

と、その時、

「ミスター!お客様、プールサイドにいらっしゃいます。ほら、あそこ」
ホテルスタッフの心無い大きな声。

気づかれました


「おー、ほんでどこ行くねん!今からどこ行くっちゅうねん!」

「オヤジ、アホやろ?あんた、真鍮ファクトリー行きたいからできるだけ早よ来てくれって言うたやないか!」

「なんかあるか?わし、今気持ちええんや、どこ行くねん、どこ」
ふざけているのでも、話盛って書いているのではありません。オヤジ、こんな日本語です、いつも。

これ以上は会話できませんので、無視。着替えるようにせかせます。
とにかく、真鍮ファクトリーで買付、家具も合わせ20フィートコンテナ1本分買付しました。

オヤジの買い付けに要した時間、わずか6時間程度。
心配ありません。いくらうざいオヤジでも仕入れに関しては私にもプライドがありますので。


予定終了!オヤジとのバリ、私の限界は2泊3日です。さあ、帰ろう。

当時のJALは帰路ジャカルタ経由、現地時間午後7時30分発。午後5時30分、空港にチェックイン。

JALの現地カウンター、全員顔見知りです。座席のリクエストをし、無理やりラウンジのチケットをもらい、イミグレーションを通過。ラウンジへ。

オヤジ、ラウンジで食いまくっています

。まずいのに、パンやらケーキやらサンドイッチやら。

私、他人のふりで水割りをいただきながら少々睡眠。
ふっと目が覚め、時計を見ると… ん??? もう、7時20分??? なぜボーディングのアナウンスがない???

あれ? チケット? あれ?
チケットに書いてあるボーディングタイム、午前3時40分?なんじゃこりゃ?

JAL、日本から着いていません。なぜ?カウンターで何も言われなかったぞ。おかしい!


空港スタッフにJAL職員を連れてきてもらえるようにお願いします。
「誰もいない。JAL、みんな休憩中」
なんだと!そうや、AJIに電話してJALの空港事務所に電話させよう… やがてAJIから返信が。


「JALね、まだ関西空港にいる。雪で飛行機が遅れてるって」

「か、かんくう?今、関空?」

「あのね、JALのスタッフが急いでラウンジに行くから待っててって」
待つこと1時間強、来ました、JALの若い日本人スタッフ

。汗、かいています。

ここから民間航空会社【日本航空】の当時のお役所体質がビックリするくらい浮き彫りになります。
しかし、この状況でも食べ続けている、

オヤジのマイナスパワー、脱帽です。

超一流ホテル、【ザ・レギャン】

でディナーを食べ、満腹の私とAJI、WINATA.
オヤジ社長に勘定を見せず、レシートにサインさせます。

「な、なんぼやねん?なんぼ?」

「細かいこと、よろしいがな。早よサインしなはれ」
すでにベロベロのオヤジ、老眼鏡がないのでよく見えません。それでいい。

酔っ払いオヤジをホテルの部屋まで連れて行き、あとは放置です。

「マッサージ呼んでくれ!マッサージ」
部屋を出た後、親父のわめき声が聞こえていました。

もちろん、無視。
ホテルで飲み直し。私の現地

携帯電話が鳴ります。

「マッサージ、呼んでくれ、マッサージ」

「マッサージ?まだ言うてんの?早よ寝たら?ホテルでも頼めますやろ」

「あかん、言葉通じへん。わし、マッサージしたいんや!マッサージ呼んでくれ!」

「1時間15万ルピアでっせ。大体2000円ね。わかった?」

「おお、安いやないか!呼んでくれ、2時間」
呼んでやりました。知り合いのマッサージ師。腕は確かです。ほんま、確かです。
しかし、おっさん。40前後小太り。見た目、小さいアケボノ…

しかも、本当は1時間6万ルピア。

儲けさせてやりましょう。

翌朝、一仕事を終えた後

午前11時、オヤジ社長を迎えに。

「おいっ、昨日な、おっさんやったで、おっさん。マッサージ」

「ふ〜ん、ほんで?女が良かった?なんで?なんかしたかった?女、好きやもんねぇ〜」

「いや、全然男でもええけどな。気持ちよかったし」
オヤジ、女に関してヘボヘボな所があります。モテたことがないので免疫がありません。

お金に寄ってきているだけの女を見抜くこともできません。
少し前に、

北新地の姉ちゃんに300万円を「ガンのお父さんの手術代」、ブルガリの腕時計を「弟の就職祝い」と古典的な手で詐欺られました。腕時計レディース、弟の就職祝い…

詐欺られた理由は、「姉ちゃんが付き合いたいって言ったから」純粋ではありません、アホです。

その姉ちゃん、北新地の前、神戸三宮のクラブにいました。私、知っていました。じじいと不細工な金持ち殺しとして有名でした。

オヤジの希望のファクトリーを案内し、オヤジのわかりにくい日本語をちゃんとした日本語に通訳し、

AJIがインドネシア語で伝えます。
一通り、オヤジの希望をかなえ、再びホテルに放置します。まだ、

夕方4時。

「晩飯、何おごってくれる?わし、中華がええなあ」

「一人で食ったら?俺はまだ仕事。何時になるかわかりませんわ」

「おごってくれへんのか?おごってくれや」

「日本語、あと20種類くらい覚えたら、おごりますわ」
ほんま、いちいちしゃべることが癇に障ってきました。

その後、私の仕事が終えたのが

夜7時。一応、オヤジに

電話してあげます。
「部屋におられないようです。ルームキーは預かっていないのでホテル内にはおられるはずです」

放っておきましょう。外国慣れはしているので大丈夫でしょう。なんでも「ジャストア〜」から始まる10種類程度の単語を並べた英語も駆使しますし。
完全放置を決定、

AJI、

WINATAと共に行きつけのイタリアンから

カラオケへ。
もちろん、

携帯電話の電源はOFF

オヤジの言動を省略しているので私が冷酷に感じるかもしれません。
しかし、私は周りに「よくあの社長の相手できるなあ、お金なしで」と言われています。


変なオヤジとバリに行ったこともありました。
途中から我慢できずにしっかり懲らしめてやったのですが、そのオヤジのマイナスオーラ

でしょうか?
帰路、

とっても疲れる出来事に遭遇しました。
2003年頃のこと、大阪の

年商250億円くらいある、とある結構な会社の社長がバリ家具に興味を持ち、元々の知り合いである私に

「バリに連れて行ってくれ」と言ってきました。
私、こんなオヤジ、

知り合いたくて知り合ったわけではありません。紹介されただけです。仕事の接点もありません。それなのになぜか、

なつかれていました。
だから、いくらお金持ちでも遠慮した物言いはしたことがありません。どちらかと言うとボロカスです。

その社長、あまりクセのいいオヤジではありません。
第一に、日本語が通じにくい、第二に、中学生並みの会話をする、第三に、歳のせいでしょうか、

酔うと同じ話を延々と繰り返します。

オヤジ社長、

お金はあります。
したがって、一緒に飲んでいるのはお金に群がっている奴ら、そのオヤジ社長の、延々と同じ話を繰り返す、中学生並みの、日本語が不自由な話に、

「社長〜、最高ですわ〜」

とか「わかります、社長!お気持ち、察します」とかぬかしやがる輩ばかりです。

私、同席した時は、遠慮なく双方の仲を変な感じに持って行ってやりました。
そんなオヤジとバリに行く羽目に…


「チケット、どうしますの?俺は、今回JALのマイルで行きますよ」

「わしか。わしは、アメックスで取るわ。ホテル、どこ泊まるんや?」

「俺はいつもの所です。オヤジさんは?」

「わしか。わしはアメックスで取るわ」
オヤジ、アメックスのセンチュリオンという黒〜いカード持ってました。

自慢か!
気乗りがしないまま、

関空へ。
オヤジ、いつも会社就業中か、会社帰りにそのまま会うことばかりだったので、普段着を始めて拝見。

ラルフローレンのジャケット&ポロシャツをこんなに不細工に着こなす人間、初めて見ました。
ズボンは、しっかり折り目の付いた紺色のスラックス。裾上げしすぎてしっかり不細工です、アルマーニ…


足元の革靴、靴のヒラキで買ったのかと思ったら、フェラガモだったり。
まあ、金がありゃええっちゅうもん、ちゃいまんな。

JAL…

私、仕事です。贅沢しません。もちろん、エコノミー。

オヤジ、ビジネス… 正直、落ちてもいいと思いましたね、このオヤジ、死ぬなら。
まあ、エコノミーとビジネスはカーテンで区切られています。

7時間も近所で分かりにくい日本語の、中学生レベルの、同じ話、繰り返されたらかないません。
安心です。

テイクオフからかれこれ2時間30分

食事のサービスも終わろうとしたその時、

「おー、シャンパン飲んでるか、シャンパン。JALのシャンパン、うまいで〜」
すでにベロベロオヤジ参上…


「あ〜あ、来た… シャンパン?エコノミーにないの知って嫌味か!」

「おー、シャンパン飲んでないんか、シャンパン。うまいのに〜」
日本語、こんなもんです、オヤジ。ボキャブラリー、

保育園児に劣ります。

「うまいうまい言うんやったら、持ってきてくださいや!持ってきて、うまいから飲んでみ?くらい言うてみい!」

「怒ってんの?持ってきたろか?持ってきたろか〜」

「早よ行け!」
持ってこれるはず、ありません。ビジネスクラスだけのサービスです。

ん?持ってきました!オヤジ、CAさんに

「面倒くさいからボトル置いといて」って言ったらしいです。

アホです。まあ、アホに免じて頂いてやります。
しかし、横に座って一緒に飲もうとします。

「CAさん、CAさん!この酔っぱらった人、自分の席に帰ってもらって。迷惑です」
お帰り頂きました。
オヤジを払い、シャンパンを頂き、買ってあった柿の種でゆっくりフライト。
デンパサールまで

快適な旅をすごした私、たまにはオヤジも使えます。

デンパサール到着、税関でオヤジ、キャラメルを職員に渡しています。

「おみやげ、おみやげ言うから、しゃあなしにやったんや」
当時、税関職員が日本人に「おみやげ、おみやげ」と言って、1000円ほど巻き上げることが横行していました。1000円出さないと入国に非常に時間をかけたり嫌がらせをします。
しかし、オヤジ、持っていたキャラメルで済ましました。アホなのか、かしこいのか…

ちなみに今はありません。問題視され、現在はアライバルビザと言う名目で堂々と徴収しています。

オヤジはアメックスで予約した、【ザ・レギャン】という超一流ホテル。

私は定宿の1泊3000円の【PARUDANA DADI】…
オヤジ、ザ・レギャンの迎えの車に乗り込もうとした時、

「おー、一緒に行こうや。俺、バリはリッツカールトンしか知らんねん。一緒にレギャン、行こうや〜」

「何言うてますの?ガキやあるまいし。レギャンでっせ、心配あるかいな」

「ええやんけ〜、晩飯、レギャンでおごるから。ええやろ〜」
断りません。レギャンで晩飯。なぜ、断るでしょう。行って差し上げます。
ただ、晩飯、とことんいってやります。

AJIも

WINATAもいます。インドネシア人、未知の世界です。

【ザ・レギャン】、素晴らしいホテルです。
70部屋弱、全室スイート。ツアー以外は安い部屋で1泊450ドル。
さあ、晩飯。レギャンのプールサイドにある

メインレストランへ。
スミニャックビーチを望み、灯りはたいまつ、テーブルデコレーションはキャンドルの灯りのみ。
周り、オーストラリアを始め、ヨーロッパ他の余裕のありそうなカップルばかり。
おっさん御一行、場違い丸出し。特に

オヤジ社長のファッション。
着替えてから一段とセンスが光ります。
ピチピチの白ポロシャツ(アルマーニ・乳首うつりまくり)、皮の短パン(アルマーニ・異様に短い)、白の靴下、黒の革靴… 身長168cm体重90s(推定)の身体。
まあ、おごらせるだけですので、良しとしましょう。外国ですし。

「AJI,WINATA、好きなもの、頼め!え〜と、俺は和牛のステーキ、シーザーサラダ、ロブスターのマヨネーズ焼き」

「お前、よう食うなあ… わしも同じもの」

AJIはイスラムですので私と同じもの、

WINATAはヒンドゥーですので肉をポークに。

オヤジ、シャンパン(スパークリング)好きです。
オーストラリアのスパークリングを1本、頼みました。もちろん、私もビールのようにいってやりました。
酔ったオヤジのマイナストークには耳を貸さず、

AJIたちと仕事の打ち合わせをしながら、一流ホテルで、しかもバリで和牛ステーキを堪能。日本の倍ほどします。
スパークリングは2本、

生ビール3杯ほど頂いて、おあいそは約

60,000円。
払わせてあげますね、オヤジ。
明日、明後日、嫌やけど相手する私への謝礼として。


AJI,

WINATA、うまかったやろ!高いもんはうまいやろ!
バニュワギでインドネシアの奥深さを嫌っていうほど頂いた、

おっさん御一行。
現在

午後7時前、早くバリに

戻りたい一心です。
とにかくバニュワギを離れたい、ベッドで寝たい、

梅ちゃんが死にそう

の三重苦を抱え、

沈没フェリーに乗り込みます。
行きで慣れたのか、少し心に

余裕があります。
フェリー内部をタオルで鼻、口を押えながら散策してみます。

「んっ?なんや?日本カーフェリー?」
船内にあるロゴマーク、【日本カーフェリー 川崎⇔木更津】
東京湾を横断するフェリーの払い下げ… 古っ


男女7人秋物語でさんまちゃんが乗っていたフェリーです。これも古っ

しかも、搭載重量・人員とも大幅にオーバー…

こりゃあかん

もう二度と乗るまいと誓い、ドキドキの2時間強を過ごします。
対岸のバリ島、ギリマヌクに到着、さあ、目指せデンパサール!

「た、高橋さん…、腹、腹が減って… 喉もカラカラです」
梅ちゃん、バリに戻って安心したのか、少し元気になりました。
確かに

昼食からかれこれ

10時間経っていました。
しかし、バリとはいえ、ど田舎の地道を走っています。午後11時、空いているレストランなんかあるのでしょうか


「梅、クタまで耐えろや。後、2時間くらいやで」

「え〜、コンビニでいいんですけど… 耐えれません」

「コンビニ?何?コンビニ?それ、なんのこと?」
今でこそ、バリ島内いたるところに、サークルKや地元コンビニがありますが、当時はコンビニ、クタの中心街以外ありませんでした。

AJIの生まれ育ちは実はギリマヌク。デンパサールまでの道中何があるかは熟知しています。

「もう少し行けば、パダン料理屋があるよ。たぶん、高橋さんでも大丈夫なお店」

「行きましょう、ねっ、行きましょう」
私は嫌でした…

しかし、梅の熱望にこたえざるを得ない状況でした。
走ること


15分ここはタバナン、ありました、パダン料理屋… 見た目はそんなに汚くありません。
パダン料理、スマトラ島の料理で日本でいえば小皿が勝手に出てくる一膳飯屋。
数々のおかずが小皿で出てきて、いるものだけを食します。その分の

お金を払うのです。

「うわ〜うまそう!いいですね〜」
梅ちゃん、テンションMAX

普段ならいらないでしょう、この料理。決してうまそうには見えません。
しかし、昨日、今日の経験が梅ちゃんのうまそうメーターのレベルをタイの山岳民族並みに引き下げていました。
ご飯は

手で食べます。手を洗う用のフィンガーボールとライムが付いてきます。
出てきました、おかず。
すべて十分に火を通しているので、食中毒の心配は50%程度でしょうか


牛肉料理が6種類、

野菜料理が4種類、

タマゴ料理が2種類、

鶏肉料理が3種類。

「うまいっすよ、高橋さん。このビーフジャーキーみたいな肉。野菜もうまいわ〜」
食べ倒している梅ちゃん、私は少しだけ、心持だけ冷えた

ビールで十分。ビンタンです。
ハエ、もちろんいます。あっ

ハエがタマゴに。うわっ、交尾を始めました。

「あー、やっと落ち着きました。おっ、このタマゴ、カレー煮じゃないですか」

「あっ、梅、あ、あんなあ…」
梅ちゃん、パクリ。タマゴをパクリ。食べました。
梅ちゃん、交尾見ていませんでした。残念です


「うま〜、カレー煮、うま〜」うん、うまいやろ。よかったな、梅。

デンパサール、クタのホテルに着いたのは

午前2時、予約は取っています。
普通のホテルです。決してきれいではありませんが。ツイン1部屋2名まで、一泊30万ルピア(約¥4000)。
チェックインです。バニュワギと違い、フロント係、起きています。

「さあ、寝ようぜ、梅。チェックイン、チェックイン。うっ!うぇっ!ぐっ」
結界です。カウンターまで3m、ロビーに近づけません。結界が張られています。

「うわっ!なんや?この匂い?うぇっ」梅ちゃんも近づけません。

「私、チェックインしてくるよ」AJI、平気です。カウンターで手続を終えます。
結界… フロント係のワキガ。目に来るほどの香ばしさ。昨日からかれこれ何回ワキガに

悩まされたか。
その中でも最強

の人間がまさかバリ島、それも中心街のクタに!
街中でオランウータンと遭遇した気分です。
しかし、インドネシア人は平気ですな。生活臭の一部なんでしょうね。

私は、いい香りが好きです。だから、
「神戸香屋」
このホテル、


ビールが冷えていました。
すべて、


許してやります。

ばあさんの魅力のとりことなりながらも、なんとかビーズを購入、

村の有力者に渡しに戻ります。
しかし、サンプルが6種類1個ずつしかありません。1、2日で20個のサンプルを作らせるためには、型紙が必要だと言い出しました。

「パターンなんか、サンプルを基に作らせろや!」

「そんなん出来る人間居ない。スタンプ屋で作ってきて」

「スタンプ屋?なんじゃ、そりゃ?」
そういえば、街のあちこちに何屋かわからない屋台がありました。道路沿いにポツンと何軒も建っています。
その屋台すべてスタンプ屋、古タイヤを短時間で加工し、スタンプを作成します。
とにかく、サンプルを持ってスタンプ屋へ。サンプル通りのスタンプを古タイヤで作ってもらいます。

「オッケー、1つ1時間30分で作るね。1つ20,000ルピア(約260円)」

「6個作ったら9時間やないか!今晩もこの村泊まったら、俺死ぬよ」

「大丈夫、このあたり、まだまだスタンプ屋、あるから」
ということで、6件に分けてオーダーです。
なぜ

スタンプ屋がいっぱいあるかというと、バニュワギ村、印刷屋がありません。ロゴマーク等はすべて簡易のスタンプで賄うからです。しかし、やつら、いい加減ですが手先は器用です。
スタンプが出来上がるまで一休みです。

車の中で睡眠タイム。

梅ちゃん、苦しそうな顔で寝ています。私も寝ましょう。


<バリバリバリ、ブルルゥ〜ン、バリバリ… シアパ!アパ・イニ!バギマナ!>

「うるさいのう!なんやねん!」

「もう〜、あっ、た、たかはしさん!そ、そと!なんや?なんなんじゃ〜」
「な、なんや!何が起こった?」
あまりのうるささに目が覚め、梅ちゃんが外を見ようとした時、窓から車内を覗き込むインドネシア人3人。目が合いました。
その後ろ、なんと

単車約200台、人間約300人が集合しています。おっさん御一行の車、取り囲んで…


「なんや?これ?」
あっけにとられていると、覗き込んでいたインドネシア人、ドアを開けようとします。
梅ちゃん、必死でガード、しかし、インドネシア人バールを振りかざします。

「あかん、こいつらおかしい!」

「梅、窓ちょっと開けろ。こいつら、何か聞いてみる」
少し窓を開け、バールを持ったインドネシア人に、

「なんや!俺ら、日本人や!なんか用か!」もちろんインドネシア語で叫びます。

「*$#&%?|”#’+><」
私、当時インドネシア語、ほんの少し言いたいことが言える程度でした。
ヒアリングなんぞ出来やしません。

「高橋さん、腹立ってきました。俺、このままボコボコなんか嫌です。やったろか!」

「梅、とりあえず、俺がこいつしばく。しばいたらバール、取り上げろ。ほんで2、3人バールでやってまえ!」

「オッケーです、でも、生きてられますかね?」

「知らんがな。このままこんな奴らに嬲り殺されるより一人二人しばき倒したろやないか!」
正直、ビビッてました。300人です、300人。でも、わけもわからずバールを振り回され、脅されてます。しかも、人相の悪いインドネシア人に。

「日本人、なめんな!おうっ!コラッ!」の精神です。
しかし、探している余裕なんかありません。意を決して、ドアを開け、バールを持ったインドネシア人に、

「オラッ!殺てもたらあ!」バールを捕まえ引きずり倒してやりました。
梅ちゃん、素早い素早い、相手の手首を踏みつけ、バールをもぎ取り上段に構えます。もちろん剣道なんか、かじっていません。
その瞬間、

Iと

AJIが大声で叫びながら帰ってきます。必死で走っています。



「たかはしさ〜ん、後ろの

赤いフラッグ、出して〜。赤いフラッグ〜、早く!」

「フラッグ?旗?」
車の後部シートの後ろに、赤と青の旗が積んであります。とにかく、言われる通り

赤い旗を出しました。

よく見ると、集団の中にも何本か同じ旗印が。
怒号が歓声に変わり、300人がこぶしを突き上げ、一斉に叫びます。

「ウオーッ!メガワティ!メガワティ!」
全員、離れていきます。

「ごめんなさい、選挙の集まり、ここであったみたい。ほんと、ごめんなさい」
AJIが泣きそうになって謝ります。
民主化以降、初の国民参加型の大統領選挙が迫っていたインドネシア、このバニュワギ村はメガワティという候補の

応援一色でした。
集会所に留まっている車、バリナンバーで乗っているのは日本人。興奮したインドネシア人は攻撃の的に感じたみたいです。

Iと

AJIはトラブル防止の為、対立候補2人の旗印を車に積んでいたみたいです。
何はともあれ、助かったみたいです。IとAJIは私たちがあまりにも良く眠っているので、起こさずにスタンプを取りに行っていたのでした。

「もう、いや!俺、もう嫌です!帰りましょ、早く!」
梅ちゃん、泣き出しました。すまん!梅!
有力者にスタンプを渡しに。
有力者、

「お腹、すいたでしょう?」ナマズの天ぷら(インドネシアではよく食べられます)をおもてなし。

高級料理

です。
しかし、ナマズを飼っている池、最初に見つけていました。ガラスの入っていない窓から見えていました。

子供がトイレ代わりに使っている池…

さぞかし美味でございましょう。

もう、あかん!我慢の限界じゃ!梅、帰ろう!
2年に一度、沈没する

フェリーに乗って。
ジャワ島の東端の村、バニュワギでこましな食堂を探す、おっさん御一行…


「あっ、あった!あの店、きれいね」

「あほか!おっさん、上半身裸でワキボリボリ搔いてるやないか!」

「あっ、あれは?」

「あか〜ん!店前のタライの中に魚が腐ったままや」
ありません、私の耐えられそうな店…


「た、たかはしさん、は、早く… もう、胃がキューって。い、いたい

」
梅ちゃん

、さっき吐いたばかりなのに腹ヘリ復活です。

「もうええわ。次にあるとこで。我慢する」
偶然、佇まいが普通、今までが大変だったからそう見えたのか、普通のレストラン

を発見。

入ります。中は日本の小汚い食堂並みで、上出来です

問題は食材、しかし、メニューは

ナシゴレン、ミーゴレン、ミークワ、アヤムゴレン、ナシチャンプルのみ。
かえって安心、

私はナシゴレン、

梅ちゃんはミーゴレン&ナシゴレン、

Iと

AJIはナシチャンプルを注文。
店主、やせ細ったおばはん

、「オランジャパン?(日本人)」と聞いてきたので、「そうだ」と答えると、満面の笑みでラジカセを持ってきました。
美空ひばりです

まさか、この僻地で美空ひばりを聞けるとは


梅ちゃん、「愛燦燦」を聞いて涙ぐみます。
「なんで、俺、こんなところでこんな目にあってんねん

」
順応性のないやつです。

うまいのかまずいのかわかりません。食器が危険な香りプンプン

で食事を楽しめません。
腹に押し込んだという感じで食事を終え、お支払い

。全部で32,000ルピア(約460円)

さあ、ビーズ

の仕入れです。

村の有力者に聞いたパサール(市場)へGO!ありました。

しかし、赤とピンクが足りません。今度はパサールの人間にビーズ屋を教えてもらいます。

「ここを少し行くと川がある。川沿いを200Mくらい行くとビーズショップある。電話しておく」
川、ありました。川沿い、車は入れません。細くてガタガタ、水たまりだらけ

水たまりをよけながら、36度の猛暑の中を歩きます

。睡眠不足が意識を奪いにやってきます


「ふ〜、あっついのう。まだか」

「あっ、おばあさん、手を振ってる。あそこ」
ばあさん

、手を振ってます。腰にサロンのみ、10年ほったらかしのバナナの皮のような乳、振り出したまま

。
ばあさんを正視できず、あいさつもそこそこに掘っ建て小屋のような店内へ

。
トタン屋根から雨漏りがするのでしょう、床のあちこちにバケツ、バケツを避けるように袋入りのビーズが山盛り置かれています

。
むせ返るような埃っぽさと、蒸し暑さが身体を襲います

。
店主

(ばあさんの長女でしょう)に赤とピンクを2sづつ探させ、購入。

汗だくです。変な臭いも申し分なくしています。

少し気分が悪くなってきたので急いで支払い、店を出ます。

川のほとりに立って深呼吸、生き返った…

と思いきや、
川でばあさん

、うんこをしていました。...